記事内に広告を含む場合があります。

『Fate/Zero』切嗣がケイネスからディルムッドのマスター権を奪わなかったのはなぜ?

本作の主人公である衛宮切嗣が、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト率いるディルムッド陣営を滅ぼしたシーンはとても衝撃的でしたね。

切嗣はケイネスとその恋人である”ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリ”の命を保証する代わりに、サーヴァントである”ディルムッド・オディナ”を令呪を使い自害させました。

しかし切嗣はその直後に、助手の”久宇舞弥”に銃を打たせて二人を殺させています。

重ねて言いますがこの一連のシーンは非常に衝撃的だった為、わたしは本作を見ていたときに開いた口が塞がりませんでした。

主人公のやることじゃねえよ。

この時切嗣はケイネスから令呪を奪うことでディルムッドのマスター権を奪うことも出来たはずです。

今回は切嗣がディルムッドのマスター権を得ようとしなかった理由について考えてみます。

『Fate/Zero』のディルムット陣営について振り返る

考察を始める前にディルムッド陣営の情報について振り返ってみます。

ケイネスがディルムッドを召喚する経緯

ケイネスは”時計塔”と呼ばれるエリート魔術師を育成する機関で、講師を務めるほど優れた魔術師でした。

彼には聖杯に叶えて欲しい願いがあるわけではなく、自分の魔術師としての実績に箔を付けるという理由でが聖杯戦争に参加します。

ケイネスは当初、自分のサーヴァントとして征服王イスカンダルを召喚しようとしました。

しかし召喚するために必要な触媒であるマントの切れ端を、教え子である”ウェイバー・ベルベット”に奪われます。

その為に代わりに用意した触媒で、ランサークラスのサーヴァントであるディルムット・オディナを召喚することになりました。

なおこの時のケイネスは、サーヴァントを律する令呪を持つ人間と、魔力を与える人間を分けるという特別な方法で召喚を行いました。

そのためディルムット陣営のマスターはケイネスと、魔力補給を担当する女性魔術師ソラウの二人組となっています。

召喚したサーヴァントであるディルムットはケイネスの勝利のために無償で仕えると言います。

魔術師の世界では等価交換が原則であるため、ケイネスはディルムットの事を信用しようとは思いませんでした。

ディルムッド陣営が切嗣によって崩壊させられた

ケイネスは優秀な魔術師であったが故に、魔術師殺しという異名をもつ衛宮切嗣にとっては格好の獲物でした。

彼は切嗣たちのアジトであるアインツベルンの城を襲撃した際には、切嗣の挑発を真に受けてしまい、冷静な思考をすることが出来なくなります。

そんな状態の時にケイネスは、魔術師の魔術回路を切り裂き繋げる効果のある起源弾を直撃してしまいます。

それによってケイネスは魔術回路が使用不可能になり魔術が二度と使えなくなった上に、半身不随で歩くことも不可能になりました。

切嗣はケイネスの仲間であるソラウを誘拐して人質にしする

切嗣は助手の久宇舞弥に、ケイネスの婚約者であるソラウを誘拐するように指示します。

その後ケイネスにソラウの命を奪わない代わりに、残った令呪全てを使い自身のサーヴァントであるディルムットを自害させるという契約を迫ります。

彼はその契約の際に「自己強制証明(セルフギアス・スクロール)」というものを使用しました。

自己強制証明とは解除不能な効力を持つ呪術契約であり、使用した術者は魂を縛られ、魔術刻印がある限り契約を破るような行動は出来なくなります

「自己強制証明」の契約に不備がないことを確認したケイネスは切嗣の提案に乗り、自己強制証明の内容に従い令呪でディルムットを自害させました。

ディルムッドが自害した後、切嗣たちはケイネスたちを銃で撃つ

切嗣はディルムットが自害したことを確認すると、助手である”久宇舞弥”に合図をしてケイネスとソラウに対して銃撃するように命令します。それにより二人は死亡してしまいました。

この時切嗣のサーヴァントであるアルトリアペンドラゴンはディルムットと戦っている最中でした。

アルトリアはサーヴァント同士の誇りある対決を汚されてしまい、切嗣に対して激怒します。

元々切嗣とアルトリアはとの信頼はあってないようなものでしたがディルムットの自害により、二人の信頼はほぼゼロになります。

ディルムッドが自害した瞬間を見たときに私は「やっぱり虚淵玄さんは読んでくれた読者を笑顔にする作家だな!」と改めて思いました。

切嗣はなぜランサーのマスター権を奪わなかったのだろう?

サーヴァントの力は軍隊に匹敵するほど強大であり、普通の魔術師はサーヴァントと戦っても勝つことは出来ません。

サーヴァントが2騎いれば相手のサーヴァントに対して複数人で攻撃できるので、戦闘を有利に進めることができます。

そのようなメリットがあるのにも関わらず、なぜ切嗣はランサーのマスター権を奪おうとしなかったのでしょうか

切嗣はディルムットのマスター権は奪えるはず

本作にて切嗣が最大の敵とみなした相手である言峰綺礼は『Fate/staynight』で行われた第五次聖杯戦争にて、第四次聖杯戦争で仲間にしたギルガメッシュの他に、ランサークラスのサーヴァントである”クー・フーリン”を従えて参戦しました。

クー・フーリンは言峰が召喚したサーヴァントという訳ではなく、魔術協会から派遣された”バゼット・フラガ・マクレミッツ”という正規のマスターに対して不意打ちで攻撃を仕掛けて奪ったサーヴァントです。

言峰がクー・フーリンの元マスターからマスター権を奪ったように、切嗣もケイネスからディルムットのマスター権も奪えたはずです。

なお言峰はクー・フーリンのマスター権を奪った際に、主人変えに同意しろという内容の令呪を使用ました。

それによりクー・フーリンは渋々言峰とマスターだと認め、彼の命令に従って行動します。

切嗣はディルムッドのマスター権を奪えたはずです。しかしディルムッドと契約したとしても命令を下すには令呪を使用する必要があり、非常に扱いにくいサーヴァントになっていたでしょう。

余談ですが言峰、クー・フーリン、バゼットさんの複雑な関係は『Fate/staynight』の番外編である『Fate/hollowataraxia』で明かされているので、気になった方はチェックしてみて下さい。

created by Rinker
角川ゲームス
¥4,747
(2024/11/13 15:36:55時点 Amazon調べ-詳細)

ケイネスを確実に殺す必要があった

サーヴァントを失ったマスターは、マスターを失ってしまった逸れサーヴァントと再契約して、聖杯戦争に復帰する恐れがあります。

切嗣はそのことを嫌って、ケイネスとディルムッドを同時に殺害できるような手段をとりました。それがケイネスにディルムッドを自害させる外道な手段です。

ソラウの腕を切り離した状態で令呪を移植しなかったのは、この外道な手段を確実に成功させるためでしょう。

もしソラウの令呪を移植してマスター権を奪いディルムッドを自害させれたとしても、ケイネスが生きて聖杯戦争に復帰する可能性が残っています。

聖杯戦争に復帰できる人間を確実に消すためには、ディルムッド陣営の人間を皆殺しにする必要がありました。

ディルムッドを維持する魔力には問題ない

聖杯戦争に参加するマスターたちは、基本的にサーヴァントたちに魔力を与えなければいけないので、本来の実力を発揮できません。

ケイネスはソラウに魔力提供する役割を担ってもらった為、自分の持つ本来の実力を発揮することが出来ました。

一人のマスターが複数人のサーヴァントと契約してしまうと、マスターの魔力量が足りなく契約したサーヴァントが本来の実力を発揮できなくなる恐れがあります。

切嗣は第四次聖杯戦争にて助手の舞弥に、自身の行動の手助けや情報収集などのバックアップを任せています。

自身がディルムットと契約しなくても、舞弥にマスター権を握らせておけば、消費魔力における問題も気にしなくて良いはずですね。

切嗣とディルムッドでは戦闘方針が真逆

切嗣は聖杯戦争が始まる前から、勝利のためならどんな手段でも使い暗殺ばかりを行う自分の戦闘スタイルと、戦いに誇りを感じる英霊とでは足並みを揃えて行動出来ないと考えていました。

そのため切嗣とアルトリアは作中でも別行動を取っているのがほとんどです。

切嗣の予想は当たっており、彼がケイネスに自害を命令したことを知ったアルトリアは、切嗣にサーヴァントの誇りを踏みにじられ激怒していました。

アルトリア陣営は汚い手段を使う切嗣と、真っ当な戦いを望むアルトリアの方針がずれており相性が最悪。

そのような状態で、アルトリアと同じく英霊としての誇りを大事にするディルムッドを自陣に招いたとしても、マスターの方針と大きく違っているため思うように制御が出来なくなる可能性があります。

切嗣が起源弾でケイネスに重傷を与えたときには、セイバーが英霊の誇りの為に、ディルムッドに自分のマスターである切嗣のいる場所を教えています。

ディルムッドは英霊の誇り ()にかけて、自分のマスターを救助しただけで切嗣には手をかけませんでした。

そのことを知った切嗣はディルムッドの事を”相当おめでたいやつ”と低く評価しています。

切嗣は英霊の考え方と自分の戦闘方針が真逆のため制御できないと考えたので、ディルムッドのマスター権を得ようとは思わなかったのではないかと考えました

結論:ディルムットが作戦の邪魔になるから

切嗣は自身の作戦とディルムッドやアルトリアなど誇り高いサーヴァントとでは相性が悪いと考えています。

ですので契約しても邪魔になると考えたので、ケイネスからランサーのマスター権を奪わなかったと思いました。

ランサーのクラスはディルムッドやクー・フーリン、『Fate/Apocrypha』のカルナなど、他のクラスよりも戦いに誇りをかけるサーヴァントが多いような気がします。

切嗣がランサーのクラスのサーヴァントと契約しても、アルトリアの時と同じように戦闘方針の違いから仲は険悪になりそうですね。

やはり切嗣と相性が良いサーヴァントは、本人が希望していたキャスターやアサシンのクラスだったのかもしれません。

なお切嗣がケイネスに起源弾を打ったシーンは文庫版3巻119ページ。

「自己強制証明(セルフギアス・スクロール)」を取り出しケイネスに契約を迫ったのが文庫版4巻の202ページです。

created by Rinker
¥858
(2024/11/13 21:53:29時点 Amazon調べ-詳細)

created by Rinker
¥858
(2024/11/13 21:53:30時点 Amazon調べ-詳細)